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自動車のボディスタイルを表現するとき、ワンボックス、ツーボックス、スリーボックスと言うことがあります。今までのところ、スリーボックスが上限で、フォーボックス車は開発されていません。
自動車のボディの各部、すなわちフロントボンネット、キャビン、リアトランクをそれぞれ箱(ボックス)とみなします。このボックスをいくつ使ってボディを構成しているかで、ワンボックス車、ツーボックス車、スリーボックス車と呼ばれます。
フロントボンネット、キャビン、リアトランクの3つのボックスを使用する車体を、スリーボックスと呼びます。車種的には4ドアセダン、4ドアハードトップ、クーペなどです。過去の日本車には2ドアセダンや2ドアハードトップもあり、それらもスリーボックス車です。またハッチバックのクーペと区別するため、スリーボックスのクーペをノッチバッククーペと呼ぶこともあります。
スリーボックス車の特徴は、車体がのびやかでバランスが良く、かっこよく美しい外見です。現在でこそ様相は変わりましたが、バブル景気の頃は高級ホテルの車寄せにはスリーボックス車以外お断りでした。(現在はSUVやミニバンでも問題としない高級ホテルが多いです。)
メリットはかっこよく美しいスタイルの他、キャビンの静寂性が挙げられます。自動車の騒音の元は大きく分けて3つあり、それがエンジンノイズ、ロードノイズ、風切り音です。スリーボックス車の場合、エンジンはフロントボンネットに収まり、キャビンとは鉄の隔壁があるため、キャビンに侵入する音は小さめです。またロードノイズは主に後輪部分からキャビンに侵入します。スリーボックス車の場合、後輪のタイヤハウスはトランク内にあり、リアシートが隔壁となるため、キャビンに侵入するロードノイズが少ないのです。
デメリットは乗員と荷物の積載量の少なさです。スリーボックス車の乗員は普通4または5名です。フロントシートがベンチシートの場合で最大6名ですが、現在日本で販売されているスリーボックス車ではほぼ見かけません。荷物はリアトランク内に収納しますが、ステーションワゴンやミニバンのラゲッジルームと比較すると、高さが圧倒的に低く搭載できる荷物の大きさもかなり制限されます。
ステーションワゴンやハッチバック車は、フロントボンネットとラゲッジルームと一体となったキャビンの2つのボックスから車体が構成されるため、ツーボックス車となります。独立したリアトランクがなく、フロントボンネットが長い車は総じてツーボックス車なので、SUVや5ドアセダン、ハッチバッククーペなどもツーボックス車です。ただし後述しますが、ミニバンはツーボックス車とは見なされないのが普通です。
ツーボックス車の特徴は、後席の後ろにリアガラスがなく後席の解放感が高いことと、後部座席からならラゲッジルームの荷物が取り出せることです。大型犬などを飼育するなら、ステーションワゴンは便利です。
メリットはラゲッジルームを覆うトノカバーを外せば、ラゲッジルームの高さが天井までになり、大きな荷物も搭載できること。ステーションワゴンやSUVを選択すればキャンプなどのアウトドアレジャーや、ウインタースポーツなど多くの荷物が必要な場合でも重宝します。
またツーボックス車は基本的に乗用車として設計されているため、乗り心地も快適です。
デメリットはスリーボックス車と比較すると、静寂さで劣る点です。ロードノイズがキャビン内に侵入する一番の経路である後輪のタイヤハウスが、キャビンとつながっているため、スリーボックス車よりはうるさくなります。
ワンボックス車とは、キャビン内にエンジンもラゲッジルームも一体化した、まさしくボックスが1つだけの車体の車です。代表的な車種としてはトヨタ ハイエースと日産 キャラバンです。
ワンボックス車は本来、商用貨物車を基本として設計していることが多く、ハイエースやキャラバンは乗用タイプのワゴンより、貨物車であるバンの方が広くグレード展開されています。
ワンボックス車の特徴として、ワンボックスというボディスタイルの呼び方がミニバンやステーションワゴンのように自動車の種類を意味する言葉になっています。自動車としての特徴は、ラゲッジルームを含めキャビンを広く取れることで、これがワンボックス車のメリットになります。
デメリットはスリーボックス車やツーボックス車と比較して車内がうるさいことです。ワンボックス車はエンジンもキャビンのボックスの中にあり、場所的には運転席の下です。そしてロードノイズの進入路の後輪のタイヤハウスもキャビン内にあるので、静寂性を求めるのが難しいボディスタイルです。
また、運転席のポジションやハンドル位置がトラックと同じで、運転感覚がボンネットのないトラックそのものであることも、乗用車の運転に慣れたドライバーにはデメリットに感じることでしょう。
トヨタ ノアや日産 セレナなどのミニバンは、果たして何ボックスになるのでしょうか。ボックス的にいえばフロントボンネットとラゲッジルーム一体のキャビンの2ボックスで構成されていますが、ミニバンをツーボックス車とは普通言いません。
というのも、フロントボンネットがツーボックス車と比較して、小型だからです。そこでミニバンのことは特別に、1.5ボックスという言い方をします。
トヨタ ノアや日産 セレナなど車歴の長いミニバンの系譜を辿ると、元々はワンボックス車でした。それが車内を静かにしたいとか、前面衝突安全性を確保したいなど、顧客や時代の要求でボンネットを設けエンジンをキャビン外に設置するようになりました。
現在のFFレイアウト、1.5ボックスのミニバンの国内第1号は、ホンダ ステップワゴンです。画期的だった点は、商用貨物をベースとせず乗用車(アコード)の基本コンポーネントを用いて製造された点です。当時のトヨタ タウンエースノアや日産 バネットセレナは商用貨物ベースでFRの2ボックス車でした。他に多人数乗用車といえばトヨタ ハイエースや日産 キャラバンで、いずれも商用貨物のバンをベースにしたワゴンです。当時のミニバンやワンボックスの人気が今ほど盛り上がらなかった理由は、商用車ベースだったからとされています。最初から乗用車として製造したホンダ ステップワゴンは大ヒットモデルとなり、現在のミニバン人気の火付け役です。
ホンダ ステップワゴンが1.5ボックススタイルを採用してから、トヨタも日産も追従しました。ホンダがツーボックス車のように大型のボンネットにしなかったのは、5ナンバー枠の全長の中でキャビンスペースを最大限に確保するため。いわゆる「MM思想」です。もし日本の道路事情がアメリカ並みだったら、ボンネットも大型化してツーボックス車になっていたかもしれません。
ミニバンで1.5ボックスを採用してから、小数点1位のボックス車が他にも登場しました。それが1.1ボックスや1.2ボックスと呼ばれるボディスタイルです。これはどのような車種に採用されているボディスタイルかというと、現行型トヨタ ハイエースや日産 キャラバンです。
1990年代中頃から、自動車の衝突安全性が叫ばれるようになりました。中でもワンボックス車のモデルチェンジを阻んだのが、前面衝突安全性でした。前後から衝突されたとき、一番安全とされるボディスタイルはスリーボックスです。フロントボンネットとリアトランクが衝撃を吸収し、わざと潰れるクラッシャブルゾーンとなり、キャビン内の乗員を保護します。
ワンボックス車の場合、前方からぶつかられると、運転席までスペースがないことから、運転者の生死にかかわる事故になりかねません。ワンボックスでは前方衝突安全性が確保できないのです。ワンボックスと同等の機能を有しながら前方衝突安全性をクリアーするボディの開発に相当時間を要し、4代目のトヨタ ハイエース(H100型)は1989年から2004年まで実に15年も製造されました。
そしてついに開発されたボディスタイルが1.2ボックスで、2004年に現行型とはる5代目トヨタ ハイエース(H200型)にモデルチェンジされました。特徴はフロントガラスの下に少し段差があり、そこにフロントマスクが取り付けられていることです。このわずかな段差で前方衝突安全性をクリアーできるクラッシャブルゾーンとしたのです。
余談ですが、H100型が製造されている間に「ハイエース」ブランドが旧態依然となることを防ぐためか、欧州仕様のハイエースが国内に投入されます。それがトヨタの最高級ワンボックスのグランビアで、現在のアルファードの系譜の始まりになります。
自動車のボディタイプは基本的にワンボックス、ツーボックス、スリーボックスです。しかし日本では1.5ボックスという特異なボディスタイルが生み出されました。それは日本の自動車メーカーの技術力の高さと、サイズなどの制約があっても使いやすく快適な車を作ろうという創意工夫の結果なのです。こういう視点でミニバンを見てみると、実に合理的に無駄なく作られた自動車であることがわかります。
画像提供:本田技研工業株式会社
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