お電話でもお気軽にお問い合わせください
0120-305-309
10:00~19:00
(水曜定休日)
今やスライドドアは、ミニバンや軽自動車に当たり前のように装備されています。スライドドアには利便性を考えたいろいろなメリットがあります。スライドドア採用車の多くは車高が高く開口部が広くなることで、小さなお子さんから高齢者の方まで乗り降りがしやすいこと、狭い駐車スペースでも車体に沿ってドアが開閉するため、隣の車にドアをぶつける心配もありません。
こんな便利なスライドドアですが、なぜ世界的に大人気のSUV車には採用されないのでしょうか?この記事では人気のスライドドアの思わぬデメリットをご紹介します。
最近よく耳にするようになったSUVとは、どんな車を指しているのでしょうか?SUVとはSport(スポーツ) Utility(ユーティリティ) Vehicle(ビークル)の頭文字をとったもの。SUVの発祥は北米で、税金が安く若者に人気のピックアップトラックから派生し、ピックアップトラックの荷台にFRP製(繊維強化プラスチック)のシェルを付けてワゴンのようなスタイルで使用したのが源流と言われています。
SUVには決まった定義がありませんが、オフローダーとクロスオーバーで大きく分類されています。
オフローダー
雪道や砂利道などの悪路や未舗装路の走行を想定した車です。車体フレームには軍用車にも用いられているラダーフレーム構造が採用されていて、強度・剛性が強く頑丈なのが特徴です。さらにフレームとボディが別々になっているので、仮にボディに大きな損傷を受けてもフレームが無事であれば自走することが出来ます。
クロスオーバー
街乗りをイメージし舗装路走行を前提にした車です。最低地上高を高く設計しSUVらしいデザインですが、乗用車の部品で製造されており、オフローダー並みの悪路走破性はありません。初代トヨタ ハリアーがクロスオーバーの元祖とされ、多くのフォロワー車を生み出すきっかけになりました。
スポーツやレジャーなどのアウトドアで活躍し、オシャレなデザインが多く人気のSUVですが、なぜ便利なスライドドアが採用されにくいのでしょうか?
SUVの特徴とスライドドアのデメリットから考えてみます。
SUVは本来、道なき道を走る車です。雪道、凸凹の激しい悪路、砂漠などを主に走行することを想定しているため、車体への振動も激しいのです。その点、部品点数が多くヒンジドアより複雑な構造のスライドドアでは故障の可能性が高くなります。
また悪路走行を常とする地域では十分な整備施設が整っていないこともあり、整備フリーが望まれるため、ヒンジドアの採用率が高くなります。
さらにオフローダー車の特徴として堅牢性がありますが、スライドドア採用車は車体側面に大開口部を設けるため、車体の堅牢性を損なうことになります。
日本でのスライドドアは、軽自動車からミニバンに至るまで多くの車種に採用される人気装備です。しかし、北米ではスライドドアを採用した乗用車は『ダサい』印象です。スライドドアを採用したミニバンの場合「サッカーママの車」と呼ばれ、母親が子供の送り迎えの為に使う便利さ優先の車というイメージで、男性が乗る車と思われていません。また都市部では商用車にスライドドアが採用されていて、スライドドア=商用車というイメージが強く、敬遠される傾向にあります。
現代のSUVはおしゃれ、走行性能が高い、高級車のイメージがあり、世界的にはスライドドア車のイメージとマッチせず、スライドドア採用のSUV車は商品にならないと考えられます。
かつてマツダにはMPV、プレマシー、ビアンテと3車種のスライドドア採用のミニバンを販売していました。しかし、MPVは2016年に、プレマシーとビアンテは2018年に販売終了し、マツダはミニバン市場から撤退しました。なぜマツダはミニバン市場から撤退したのでしょうか?
その理由はマツダがテーマとしている「走る歓び」と「安全性」を優先したためです。マツダの言う「走る歓び」とはドライバーの意のままに動く車であり、アクセルを踏んだら踏んだだけパワーが出て、ブレーキも踏んだだけブレーキが利き、ハンドル操作も正確に反応し、まさに人と車の一体感を感じる走行です。スライドドア採用車では、マツダが目指す「走る歓び」を実現するのが難しいとの判断です。
またヒンジドアに比べ、スライドドアは側面衝突安全性能に劣ることから、マツダが目指す安全性を確保できないとのこと。
マツダの考える「走る歓び」と「側面衝突安全性の高次元での確保」を、スライドドア車では実現できず、これもまたスライドドアのデメリットと言えます。
そもそも論ですが、1900年代初頭にSUVの元祖であるジープが誕生して以来、この100年間で、スライドドアを採用したSUVはまだ誕生していません。
例外的にSUVのシャーシにスライドドア採用のミニバンボディを架装し、悪路走破性を高めた車種は世界に1車だけ存在します。それが三菱 デリカD:5です。では三菱 デリカD:5はSUVではないのかと思われそうですが、三菱の公式HPのカーラインナップページではミニバンにカテゴライズされています。
三菱 デリカD:5には歴代デリカシリーズを通じ熱狂的なファンがいます。しかし一般的にはSUVシャーシとミニバンボディの組み合わせは需要が低く、他のミドルサイズミニバンと比較すると、販売が好調とは言えません。
今後スライドドアを搭載したSUV車が開発される可能性はありますが、2022年1月現在では前例がなく、需要も低いため開発されていないと考えられます。
現代の国産SUVはグローバルで販売することが多く、例えばトヨタ ランドクルーザーは中東で60%、ロシアとオーストラリアで30%、日本で10%を販売しています。世界的に見て、スライドドアの需要はあるのでしょうか?
日本でスライドドア車が普及した要因の1つに、道路や駐車場の狭さがあります。スーパーの駐車場でヒンジドアを開くとき、隣のクルマにドアがぶつからないかヒヤヒヤですよね。でもスライドドアなら、その心配はありません。
日本の道路の幅も北米と比較したら狭いので、助手席側のヒンジドアを開けるには車両を車線の右寄りに駐車しなけらばならず、交通事故を誘発しそうです。でもスライドドアなら、ドアの開くスペースは車体に沿った方向なので車両を車線左寄りに停めても乗り降りができます。
スライドドアは日本の交通環境に非常にマッチしたドアと言えます。では海外の事情はどうでしょうか。
北米での駐車場は前向き駐車が当たり前で、1台の駐車スペースが広くとられています。日本の駐車スペースのように隣の車にぶつける心配も特にありません。スライドドアが普及しないはずですね。
欧州では旧市街地では、昔からの細い道を使用しています。旧市街地の多くは街並み自体が世界遺産や観光資源となっている為、道路拡張などの改修が難しく商用車を中心にスライドドアの利便性を重視されています。乗用車でも商用車から発展したルノー カングーの大ヒットを受け、プジョーやシトロエンからスライドドア車が発売されています。
日本と欧州に共通するのは、道の狭さです。こうした交通環境から必然的に考案されたドアがスライドドアと言えそうです。
この記事ではSUVになぜスライドドアが採用されないのかと考察しながら、スライドドアのデメリットをご紹介しました。利便性に富むスライドドアを採用するとSUVの特性を活かしきれないこと、スライドドアはヒンジドアより部品点数が多く故障の確率が高いこと、走る歓びや側面衝突安全性を高次元で確保できないこと、海外でのスライドドアのイメージが高くないこと。世界的に人気のSUVにスライドドアが採用されない理由は以上と考えられ、これらがスライドドアのデメリットでもあると言えます。
スマートフォン、パソコンからのお問い合わせ・ご相談はこちら